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数字語の提案

数字語の提案
ことば (40) 日本語を数字で表現する

松野町夫 (翻訳家)

電話番号や歴史の年号は「語呂合わせ」で覚えるのが一番。これだと簡単でいつまでも忘れない。仏教が日本に伝来した年は「百済(くだら)の仏にご参拝(538年)」と覚えましたね。

円周率(パイ) = 3.14 1592 65 35 8979 32 38462 6433 83279
産医師異国に向こう 産後役なく 産婦宮代に 虫散々 闇に泣く

ルート2 = 1.41421356 ..... ひとよひとよにひとみごろ
ルート3 = 1.7320508 ..... 人並みにおごれや

上の例はいずれも、数字の読みをことばに置き換えたものである。0から10までの数字は、従来から音訓ふたつの読み方があったが、戦後、英語の普及に伴って英語音も加わってきた。これにより数字音の読みは仮名30文字を表現できるまでに大きく成長した。

たとえば、0(ゼロ) は、「れい・れ・まる・ま」が従来からの読みだったが、その後、英語音の「ゼロ・ゼ・セ・オウ・オ」が追加された。さらに1990年代、ポケベルのメインユーザーであった女子高生が「ラ」の音を新たに追加した。なので0(ゼロ)は現在、「れい・れ・まる・ま・ゼロ・ゼ・セ・オウ・オ・ラ」 と読める。厳密にいえば、0(ゼロ) は、まる(○)やオウ(O)とは意味が異なる。しかし、数字音の世界ではOK。英語でも「007」は「ゼロゼロセブン」ではなく、アルファベットの"O"が2つという意味で、「ダブルオウセブン (double-O seven)」と読む。私は、「お」と「を」を同音とみなして「を」の音も0(ゼロ)の読みに追加することを提案したい。読みが増えると表現力が広がるので。

0 = れい・れ・まる・ま・ぜろ・ぜ・おう・おー・お・ら・を
1 = いち・い・ひとつ・ひと・ひ・わん・わ・あい・あ
2 = に・ふたつ・ふた・ふ・つー・つ
3 = さん・さ・みっつ・みつ・み・すりー・すり・す
4 = し・よっつ・よん・よ・フォー・フォ
(以下、同様)

数字の読み(語呂合わせに使用。30文字が表現可能)
数字語の提案_b0129120_9374721.jpg


注記:
ポケベル語は、ポケベルのメインユーザーである女子高生が1990年代に考案し日本全国に広がった。たとえば、14106(愛してる), 724106(何してる?), 889 (早く!), 0906(遅れる), 3470(さよなら) などが有名。ちなみに、14106(愛してる) の1(ワン)とI(アイ)は同じものではないが、混同しやすいほど似ているので同じものと見なしている。ゼロ(0)とオウ(O)も同様。

数字をことばに翻訳するのは比較的簡単。しかしこれとは逆に、すべてのことばを数字に置き換えるのは、現時点では不可能。現代日本語の五十音表には、「あかさたな」~「わをん」まで合計46文字の仮名がある。数字音は、英語音が加わったことにより30文字まで表現できるが、残念ながら残り16文字(うかけそたちぬねのへほめもゆりん)に対応する数字がない。換言すると、残り16文字に対応する数字を新たに割り当てさえすれば、数字が日本語の表音文字に進化することになる。そこで私はこの16文字に数字を割り当てることを提案したい。これは日本語を数字で表現するシステム(数字語)の提案である。

表音文字は 1対1 が理想。仮名1文字に1つの数字を当てるのが望ましい。本来ならば、46種類の数字を使用すればよいのだが、それではおもしろくない。できれば伝統的な語呂合わせを活用したい。語呂合わせでは 1数字だけで複数の読み方が可能。単語はその数字の組合せなので読み方は無数になる。たとえば、893。やくざ・薬味・白山(はくさん)・焼くさ・野球さ…。どの単語を選定するは文脈次第。最終的には日本語として意味をなすかどうかが決め手となる。要は慣れと勘の世界だ。以前、速記を学習した体験から、慣れてくれば勘が働くようになり、そのうちにすらすらと読めたり書けたりするようになるのではないかと考えている。

数字語は、伝統的な語呂合わせ数字(30字)と新規割当数字(16字)を使用して日本語を数字で表現しようという無謀な試みである。数字語は表音文字としては仮名に劣るが、それでも日本語が数字で表現できるのはすばらしいこと。何しろ、数字は万国共通、しかもパソコンのテンキーから誰でも簡単に入力できる。

46文字(仮名)のうち、30文字はとりあえず普通の人が読めるはずなので問題はない。問題は残り16文字(うかけそたちぬねのへほめもゆりん)にある。この16文字には対応する数字がない。そこで新規に数字を割り当てるのだが、ここが数字語の成否を決める一番大事なところ。いろいろな方式がありうる。どの方式が一番覚えやすく、使いやすく、読みやすいのか? 最善の方式は私にもまだわからない。(皆さまのアイディア、大歓迎!)

とりあえず、ここでは「あ」行を 1、「か」行を 2、「さ」行を 3 … とする。使用する数字は10種類の数字(0-9)。伝統的な語呂合わせ数字(30字)と新規割当数字(16字)とを明確に区別するため、当面、新規割当数字は文字サイズを小さく書くとか、○付き数字にするとか、何らかの工夫が必要だ。

16文字(うかけそたちぬねのへほめもゆりん)は、以下の新規割当数字(16字)を提案したい。

「う」 = 1 → 有為(うい)の奥山
「か」 = 2 → 蟹(かに)
「け」 = 2 → ケニア
「そ」 = 3 → 「そーさ」
「た」 = 4 → 足し算
「ち」 = 4 → 地史(ちし)
「ぬ」 = 5 → ぬかご
「ね」 = 5 → 猫
「の」 = 5 → 鋸(のこ)

「へ」 = 6 → 兵六(へーろく)
「ほ」 = 6 → 幌(ほろ)
「め」 = 7 → メナード
「も」 = 7 → モナ
「ゆ」 = 8 → 湯屋(ゆーや)
「り」 = 9 → 陸(りく)
「ん」 = 0 → 雲嶺(うんれい)

私の独断と偏見で、仮名に数字を当てた五十音表を以下に掲載する。

五十音表(仮名に数字を当てる)
数字語の提案_b0129120_9384672.jpg


ためしに、実際にことばを数字に翻訳してみる。

49(フォーク),320(スプーン), 1026(テーブル), 7290(ナプキン), 2010(プレート), 86(ハロー), 084(お早う), 50241(こんにちわ), 50801(こんばんわ), 3470(さよなら), 39(サンキュー), 81(はい), 118(いいえ), 570(ごめん), 114(いいよ), 4649 (よろしく), 0343 (お刺身), 349 (ミュージック), 710 (納豆)

・ 拗音(しゃ・しゅ・しょ など)はスラッシュ「/」で示す。例: 学校 (2/5)
・ 清音と濁音・半濁音(ぱ行)は区別しない。例: 国語(595), 音楽(0029)
・ 長母音(あー、かー、さー )は表記しない。例: 高校(55), 佐藤(310)
・ 文中の数字は数字語と区別するため、かっこ( )でくくる。例:150人= (150) 20

ウーン、改良の余地がいっぱいありそうですね。ことばは数字語に簡単に翻訳できる。しかし逆に、数字語をことばに翻訳するのはこの方式では極端に難しい。これは仮名と数字語が「1対1」ではなく「1対多」の関係だということに起因する。でも、とりあえず数字語が使用可能なことは何となくわかりました。数字語はすばやく書けるので速記文字として、あるいは日記や手帳など、個人的なメモにも活用できそうです。パソコンで入力し保存することもできますよ。


by LanguageSquare | 2008-12-03 09:53 | 数字語 | Comments(0)