疑似関係代名詞
as, than, but

松野町夫 (翻訳家)

as, than, but は本来接続詞であるが、たまに関係代名詞になることもある。その場合、英文法ではそれらを疑似関係代名詞とよぶ。疑似関係代名詞が成立するには、先行詞とそれを修飾する節(as 節, than 節, but 節)が必要だ。

「疑似」とは、本物に近い偽物を意味する。しかし疑似関係代名詞のうち、as だけは本物の関係代名詞という感じが強い。実際、ランダムハウス英語辞典、リーダーズ英和辞典、ジーニアス英和大辞典などでも、こうした場合における as を関係代名詞として定義している。

君と同じ時計を持っている。
I have the same watch as you have.
= I have the same watch that you have.

ここで便宜上”the same watch” を先行詞、as を関係代名詞、”as you have” を as 節(as + S + V)とよぶことにする。この場合、as は that に置換できるので関係代名詞 that と同様の働きをしていることがわかる(as = that)。また以下に示すように、as = who, as = whom, as = which, as = where となる場合もある。

as
制限用法: as は such, the same, as ... などを含む先行詞と相関的に用いる。
また as は as 節中において、主語や目的語、または補語として機能する。


Choose such friends as will benefit you. → as は(as 節中において)主語
= Choose those friends who will benefit you.
君のためになるような友達を選びなさい。

Such girls as he knew were teachers.  → as は(as 節中において)目的語
= Those girls whom he knew were teachers.
彼が知っているような女の子は先生だった。

Such experience as I have is useless in this situation. → as は目的語
私がしたような経験は、この状況では役に立たない。

I’m not such a fool as you are.  → as は補語
私はあなたのようなばかではない。

I have the same trouble as you have.  → as は目的語
= I have the same trouble that you have.
私もあなたと同じような悩みをかかえている。

I gave him as much money as I had with me.  → as は目的語
= I gave him all the money that I had with me.
私は持っているだけのお金を彼ににあげた。

He is as great a scientist as ever lived.  → as は主語
= He is the greatest scientist that ever lived.
彼は今までにない偉大な科学者である。

as
非制限用法: 文(主節)が先行詞となる。以下、下線部は先行詞を示す。


She did her job well, as can be proved by the records.
= She did her job well, which can be proved by the records.
彼女は自分の仕事を立派にやった。これは記録を見ればわかる。

He was late for school that day, as is often the case with him.
= He was late for school that day, which is often the case with him.
その日、彼は学校に遅刻したが、これは彼にはよくあることだ。

As was expected, he did not turn up.
= He did not turn up, which was expected.
予想どおり、彼は姿を見せなかった。

As is usual with hybrids, the plants were sterile.
= The plants were sterile, which is usual with hybrids.
雑種の場合よくあることだが、その植物も実がならなかった。

as が関係副詞(where, when)に:
as は関係副詞(where, when)として機能することもある。この場合、as は where に置き換えることができるので、関係副詞 where と同様の働きをしていることがわかる(as = where)。ただしこの例文では、as 節の主語や動詞は省略できるが、where 節の主語や動詞は省略できない。

私たちは前と同じ場所で会った。
We met at the same place as before.
= We met at the same place as (we had met) before.
= We met at the same place where we had met before.

than
比較級を含む先行詞と相関的に用いる。


We have more oranges than we could eat in a week.
うちには一週間では食べきれないほどのオレンジがある。

He's a better man than you'll ever be.
彼は君なんかにはとてもなれそうもないくらいのいい人物なんだ。

Fewer students than we had expected were present there.
そこに出席していた学生は私たちの予想よりも少数だった。

but
先行詞が否定語の場合、but は(that ... not)の意味を表す。文語調。
主節は there is の構文で始まることが多い。


There is nobody but has their faults.
欠点のない人は一人もいない。

There is no rule but has some exceptions.
例外のない規則はない。
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# by LanguageSquare | 2018-07-16 09:10 | 関係詞 | Comments(0)
関係詞の省略
関係代名詞や関係副詞は省略できる場合がある

松野町夫 (翻訳家)

関係代名詞(who, which, that)は、次のような場合に省略できる。ただし、省略できるのは制限用法の場合のみ。以下、カッコ内の関係代名詞はすべて省略可能。

関係代名詞が他動詞の目的語のとき(whom, which, that)
The man (whom) I met yesterday is a teacher. きのう会った方は先生です。
The man (whom) she married is an American. 彼女の結婚した相手はアメリカ人です。
This is the book (which) I have chosen. これが私の選んだ本です。
This is the book (which) I bought yesterday. これはきのう私が買った本です。
This is the only pencil (that) I can find. この鉛筆しか見当たらない。
That's all (that) he wanted to know. 彼が知りたかったのはそれだけだ。
It was Tom (that) we saw. 私たちが見たのはトムでした。
You should open the wine (that) our guests brought.
ゲストの皆さんからいただいたワインを開けるのがいいわね。
It was beer (that) you drank, not water. 君が飲んだのはビールで、水ではなかった。
It’s the best novel (that) I’ve ever read. これまで読んだなかで、それが最高の小説です。
Here is the book (that) you wanted. ほらここにあなたがほしがっていた本があります。

関係代名詞が前置詞の目的語のとき(whom, which, that)
The woman (whom) I talked to is an interpreter. 私と話した女性は通訳です。
That is the man (whom) I had lunch with. あちらの方が私が昼食を一緒に食べた男性です。
The pen (which) you're looking for is in this drawer. 捜しているペンはこの引き出しの中です。
It's only you (that) I can rely on. 私が頼りにできるのはあなただけだ。
Is this the house (that) they live in? これが彼らの住んでいる家ですか。
Did you find the book (that) you were looking for? 探していた本は見つかりましたか。
The people (that) I spoke to were very helpful. 私が話した人々はとても力になってくれた。

先行詞が人の地位・職業・性格などで関係代名詞が補語のとき(that)
この場合は that を使う。 (who, whom は使えない)

Bob is not the man (that) he used to be. ボブは昔の彼とは違う。
He isn't the hero (that) he used to be. 彼は昔のような英雄ではない。
He is not the coward (that) he used to be. 彼は昔のような臆病者ではない。
I’m not the fool (that) you thought me. 私は君が思っていたような馬鹿ではない。
I am no longer the handsome young man (that) I once was. もう私は紅顔の美少年ではない。
That actor is no longer the central figure (that) he once was.
もうあの俳優は以前のような中心的人物ではなくなっている。

関係代名詞が主語のとき(who, which, that)
<There is ...>,<Here is ..> の構文で:

There is a person (who) is waiting to see you. ご面会の方が見えています。
= There is a person (that) wants to see you.
= There is someone (who) wants to see you.
There's no one here (that) cares about it. そのことを気にする人はここにいない。
There’s no one (who) works harder than you. あなたのような勉強家はいません。
There is nothing (that) you can do about it now. 今、それについて君ができることは何もない。
There's a shop across the street (that) sells shoes. 道の向い側には靴を売っている店がある。
Here is someone (who) wants to go with you. 君に同行したいという人がここにいます。

関係代名詞が主語のとき(who, that)
<It is ...>, <That is ...> の強調構文で:

It was Tom (who) lost his watch. 時計をなくしたのはトムだった。
That was John (who) just went out. 今、出て行ったのはジョンだ。
It was James (who) met Tom in the park yesterday. きのう公園でトムに会ったのはジェームズだ。
It was Taylor (that) met Roy. ロイに会ったのはテイラーでした。
It was I (that) broke the window. 窓ガラスを割ったのは私だ。
It was Jim (that) revealed the secret to me.その秘密を私に明かしたのはジムだった。
It was Mr. Smith (that) gave Joe this ticket. この切符をジョーにやったのはスミスさんでした。

関係代名詞の後にbe動詞が続くとき(who is, which is, that is)
ただしこの場合、関係代名詞とbe動詞の両方を一緒に省略する。

The boy (who is) walking over there is Ken. あそこを歩いている男の子はケンです。
He was a victim (who was) killed in the accident. 彼はその事故で死亡した被害者だった。
The party (which was) held yesterday was a success. 昨日開かれたパーティーは盛会だった。

The high jump is an athletic event in which a person runs and jumps as high as possible over a bar (that is) set between two upright poles.
走り高跳びは競技種目の一つ。助走して、支柱に架けたバーを跳び越し、その高さを競うもの。

関係副詞の省略
制限用法の関係副詞も省略できる。ただし、where は省略できないが、when は会話だけでなく書き言葉でもしばしば省略される。また、where, when, why, how の代りに that が用いられることがあり、この that はしばしば省略される。以下、カッコ内の関係詞は省略可能。

これが私たちの住んでいる家です。
= This is the house where we live. → where は省略不可
= This is the house in which we live. → in which は省略不可
= This is the house (that) we live in. → that は省略可能。ただし、in を補充する。

Monday is a day (when) I have a lot of work to do. 月曜日は私には多くの仕事がある日だ。
I will never forget the time (when) we first met. 私たちが初めて会った時のことを決して忘れません。
You were born the same year (that) I was. 君は僕と同じ年の生まれだね。
The day (that) we arrived was a holiday. 私たちが着いた日は休日だった。
You were in a hurry the last time (that) I met you. この前会った時君は急いでいたね。

There's no reason (why) I should believe it. 私がそれを信じる理由は何もない。
Let me tell you the reason (why) I disagree. 私が反対する理由を言わせてください。
Do you know the reason (why) he refused to go? 彼が行くのを断った理由を知っていますか。
The reason (that) I came here is to meet you. 私がここへ来たのは君に会うためだ。

I don't like the way (that) he speaks. 彼の話し方が嫌いだ。
注記: the way how という言い方は現代ではしない。way か how のいずれかを使う。
This is the way (that) I did it. = This is how I did it. 私はそれをこうしてやりましたよ。
Do you know the way (that) he cooks it? 彼がそれをどう料理するか知っていますか。
= Do you know how he cooks it?
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# by LanguageSquare | 2018-06-19 10:36 | 関係詞 | Comments(0)
関係詞雑感
先行詞は被修飾語に相当し、関係詞節は修飾語に相当する

松野町夫 (翻訳家)

英語には関係代名詞(who, which, that)や、関係副詞(where, when, why, how)などの関係詞があるが、日本語に関係詞はいっさいない。しかし関係詞を含む英文(=関係詞節)を和訳したり、逆に、和文を関係詞を含む英文に英訳したりすることができる。これはつまり、日本語には関係詞はないが、先行詞や関係詞節に相当するものは存在するということを示している。

ここで、the boy who broke the window 「窓ガラスを割った少年」を例にとる。
英文法的には、boy が先行詞で、who が関係代名詞、who broke the window が関係詞節である。これに対して国文法的には、「少年」は被修飾語で、「窓ガラスを割った」は修飾語、もっと正確にいうと、文章形式の連体修飾語である。

先行詞 ”boy” = 被修飾語「少年」
関係詞 ”who” = なし
関係詞節 ”who broke the window” = 修飾語「窓ガラスを割った」

先行詞は被修飾語に相当し、関係詞節は修飾語に相当する。修飾語の配置について、日本語では修飾語は常に被修飾語の前に置かれるのに対して、英語では関係詞節は常に被修飾語(=先行詞)の後に置かれる。つまり、日本語の修飾語は常に前置修飾語であるのに対して、英語の関係詞節は常に後置修飾語である。

窓ガラスを割った」少年 → 日本語の修飾語は常に前置修飾語
the boy “who broke the window” → 英語の関係詞節は常に後置修飾語

ちなみに、日本語の修飾語は前置修飾語の一種類しかないが、英語の修飾語は前置修飾語(premodifier)と後置修飾語(postmodifier)の二種類がある。たとえば
セレブとは有名人のことです。
A celebrity is a famous person. → 英語の形容詞は、通常、前置修飾語
A celebrity is a person who is famous.  → 英語の関係詞節は常に後置修飾語

以下は、英語の「ストレッチャー」と日本語の「担架」を英英辞典と国語辞典でそれぞれ定義したものである。英語は先行詞(device, frame, bed)の後に関係詞節、日本語は被修飾語(道具、用具、器具)の前に修飾語が配置されているのが一目瞭然だ。日本語はふたつの文で定義したものもあるが、英文はすべてひとつ。一般に英語は関係詞のおかげで、長文に対しても言語的に安定した構造を持つ。

stretcher
· a device that is made of a long piece of thick cloth stretched between two poles and that is used for carrying an injured or dead person. [メリアム・ウェブスター英英辞典]
· a covered frame for carrying someone who is too injured or sick to walk. [LAAD2]
· a type of bed used for carrying someone who is injured, ill, or dead. [MED2]
· a long piece of strong cloth with a pole on each side, used for carrying sb who is sick or injured and who cannot walk. [OALD7]
· a long piece of canvas with a pole along each side, which is used to carry an injured or sick person. [COBUILD English Dictionary]

担架
· けが人や病人をのせてはこぶ道具。【学研 小学漢字辞典】
· 傷病者をのせ、手でになって運ぶ道具。【岩波国語辞典】
· けが人・病人などをのせて、人が手で運ぶ用具。stretcher.【日本語大辞典】
· 病人・負傷者などを乗せて運ぶ道具。普通、二本の長い棒の間に布を張ったもの。【大辞林】
· 病人、けが人を人の力で持ち上げて運ぶ運搬用具で、脚、車輪はない。【日本大百科全書】
· 病人や負傷者を搬送するため枠に麻布などを張った持ち手部分をもつ器具。【ウィキペディア】

関係詞を含む英文(=関係詞節)の翻訳はやっかいだ。短文はともかく長文となると苦労する。これは、日本語に関係詞がないことや、関係詞節が常に日本語と反対の語順、後置修飾語となることに由来する。関係詞節(とくに制限用法)は、頭から訳していくことができない場合が多い。

以下に、ニューヨークタイムズの2018年5月4日のニュース速報を引用する。見出しは 2つの英文から成る。二番目の文に関係詞が出てくる。”The academy that picks a winner” の academy が先行詞で、that が関係代名詞(制限用法)である。

The Nobel Prize in Literature will not be awarded this year. The academy that picks a winner has been engulfed in a sex abuse scandal.

ノーベル文学賞、今年の受賞者発表を見送る。文学賞を選考するアカデミーは現在、性的虐待スキャンダルの渦中にある。(参考訳)

上記はいずれも短文なので翻訳に問題はない。問題となるのは、以下の本文である。この英文はひとつの文なのにかなり長く、しかも関係詞がふたつ(when, that)出てくる。ちなみに、when は関係副詞(非制限用法)で、that は関係代名詞(制限用法)ではあるが、making this のthis を先行詞として関係副詞的に用いてある。

The Swedish Academy said it would postpone the 2018 award until next year, when it will name two winners, making this the first year since World War II that the panel has decided not to bestow one of the world’s most revered cultural honors.

この英文をひとつの和文にまとめるのは至難の業だ。無理してひとつにまとめたとしても、日本語として読みづらい文章になるおそれがある。こうした関係詞を含む長文の英和翻訳の場合、意味のまとまりごとに、いくつかの文に分割してから訳していくのが一番簡単な方法だ。ここでは、たとえば、みっつに分割する:

The Swedish Academy said it would postpone the 2018 award until next year.
スウェーデン・アカデミーは2018年文学賞の発表を来年に先送りすると発表した。
Next year it will name two winners.
来年、受賞者を発表する際に今年の受賞者も合わせて公表する。
It will be the first year since World War II that the panel has decided not to bestow one of the world’s most revered cultural honors.
世界で最も栄誉ある賞のひとつを今年は授与しないとなると、これは第二次世界大戦以来初めての事態となる。

このように分割してから訳し、最後に分割した訳文をつなぎ合わせてまとめる。

スウェーデン・アカデミーは2018年文学賞の発表を来年に先送りすると発表した。来年、受賞者を発表する際に今年の受賞者も合わせて公表する。世界で最も栄誉ある賞のひとつを今年は授与しないとなると、これは第二次世界大戦以来初めての事態となる。(参考訳)
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# by LanguageSquare | 2018-05-29 10:09 | 関係詞 | Comments(0)
関係詞の用法
制限用法と非制限用法との相違点

松野町夫 (翻訳家)

関係代名詞(who, which, that)や、関係副詞(where, when, why, how)などをまとめて関係詞とよぶ。関係詞は一般に、名詞(=先行詞)の直後に置かれ、その名詞を修飾する節(=関係節)を作る。

たとえば、the boy who broke the window 「窓ガラスを割った少年」の場合、
boy が先行詞で、who が関係代名詞、who broke the window が関係節である。
単に「少年」だけでは誰のことを指しているのかわからないが、「窓ガラスを割った」という修飾語(関係節)を付けることで、その少年を限定できる。このように関係節は、先行詞を限定または特定する働きがあり、こうした用法を制限用法と呼ぶ。

He is the boy who broke the window. 〔制限用法〕
彼が窓ガラスを割った少年です。

これに対して以下の例文では、先行詞と関係詞との間にコンマが挿入されたことにより、関係節はもはや先行詞を限定しておらず、単に補足的な説明を加えているにすぎない。このように関係節が先行詞を限定しない用法を「非制限用法」と呼ぶ。

I went to see the doctor, who told me to rest for a few days. 〔非制限用法〕
= I went to see the doctor, and he told me to rest for a few days.
医者に行ってみてもらったところ、数日間休息するように言われた。

以下のふたつの例文では、daughter が先行詞で、who が関係代名詞である。前者は先行詞と関係詞との間にコンマがないので制限用法、後者はコンマがあるので非制限用法となる。非制限用法のコンマは、通例 and の意になるが、文脈により but, because, though, if などの意になることもある。

They have a daughter who is married to an American. 〔制限用法〕
彼らにはアメリカ人と結婚している娘が一人いる。
They have a daughter, who is married to an American. 〔非制限用法〕
= They have a daughter, and she is married to an American.
彼らには娘が一人いて、その娘はアメリカ人と結婚している。

制限用法と非制限用法との違いは、単にコンマの有無にすぎない。しかし意味は微妙に異なる。制限用法では、娘の意味(範囲)を「アメリカ人と結婚している」と制限した上で、そのような娘が一人いると述べている(つまり彼らには複数の娘がいる可能性がある)。これに対して非制限用法では、娘が一人いることを述べた上で、追加情報として、その娘がアメリカ人と結婚していることを付け加えている(彼らには娘は一人しかいない)。

制限用法の who は that に書き換え可能だが, 非制限用法では that は使えない。同様に、制限用法の which は that に書き換え可能だが, 非制限用法では that は使えない。

They only employ people who already have computer skills. 〔制限用法〕
= They only employ people that already have computer skills. 〔制限用法〕
その会社はコンピューターを使える人だけを雇っています。
Ron, who usually doesn't drink alcohol, had two beers. 〔非制限用法〕
ロンは通常酒をやらないが、(その日は)ビールを2杯飲んだ。
(Ron, that usually ... はダメ。非制限用法では that は使えない)

非制限用法の which は、事物(名詞)だけではなく、先行する文全体を指すこともある。たとえば、
He said he saw me there, which was a lie. 〔非制限用法〕
彼はそこで私を見たと言ったが、それはうそでした。

一般に制限用法か、非制限用法かは、文脈や先行詞との関係で決まる場合が多い。先行詞がすでに特定されていれば非制限用法、そうでなければ制限用法(または非制限用法)にする。
固有名詞は特定の人や物の名前を表すので特定されている場合が多い。先行詞が特定されていれば、わざわざその意味を制限したり限定したりする必要がない。つまり、先行詞が固有名詞で特定されている場合、コンマを付けて非制限用法にする必要がある。

I visited the Tokyo Tower, which was constructed in 1958. 〔非制限用法〕
私は東京タワーを訪れたが、これは1958年に建設された。

上記の英文からコンマを削除して、I visited the Tokyo Tower which was constructed in 1958. のような制限用法にすると、「私は、1958年に建設された東京タワーを訪れた」となり、東京タワーが複数存在するような印象を与える。しかし実際には東京タワーは世界にひとつしかなく、特定されているので非制限用法にする必要がある。ただし、普通名詞の「タワー」であれば、文脈に応じて制限用法にも非制限用法にも、どちらにでもすることができる。

I visited the tower which was constructed in 1958. 〔制限用法〕
私は、1958年に建設されたタワーを訪れた。
I visited the tower, which was constructed in 1958. 〔非制限用法〕
私はそのタワーを訪れたが、それは1958年に建設されたものであった。

関係副詞(where, when)についても同様だ。「パリ」は固有名詞なので非制限用法となるが、「都市」は普通名詞なので制限用法(または非制限用法)とする。ちなみに、why, how には非制限用法はない。

This is Paris, where we lived for six years. 〔非制限用法〕
ここはパリで、私たちはここに6年間暮らしました。
This is the city where we lived for six years. 〔制限用法〕
ここが私たちが 6年間暮らした都市です。

Wait till night, when he will be back. 〔非制限用法〕
夜まで待ちなさい、その時分には彼も帰ってきますから。
He killed himself on the night when he heard the news. 〔制限用法〕
彼はそのニュースを聞いた夜、自殺した。

For years, a joke among Trump Tower employees was that the boss was like Manhattan’s First Avenue, where the traffic goes only one way. 〔非制限用法〕
この数年間、トランプタワーの従業員たちの間でささやかれているジョークに、ボスはマンハッタンの一番街と同じだというのがある。一番街も一方通行だからである。
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# by LanguageSquare | 2018-04-28 10:25 | 関係詞 | Comments(0)
関係副詞
関係副詞には where, when, why, how がある

松野町夫 (翻訳家)

関係副詞は、関係代名詞と同様に、名詞(=先行詞)の後に置かれ、その名詞を修飾する節(=関係節)を作る。たとえば、the house where I live 「私が住んでいる家」の場合、house が先行詞で、where が関係副詞、where I live が関係節である。

関係副詞には where, when, why, how の 4 種類がある。先行詞が場所の場合は where, 日時の場合は when, 理由の場合は why, 方法の場合は how というように使い分ける。本来、where は「どこに」、when は「いつ」、why は「なぜ」、how 「どのように」を意味する疑問副詞だが、これらの単語がいったん関係副詞として使われると、もとの意味は消失し、まったく異なる用法や機能を持つようになる。

関係副詞を含む構文は「先行詞」+「関係節」という語順となる。関係節は関係詞で始まる。以下の例文の下線部は関係節(relative clause)を表す。関係副詞は(前置詞+which)に置き換えることができる。

where (= in which, to which) 先行詞が場所の場合

This is the house where I live. ここが私の住んでいる家です。
= This is the house in which I live.
That is the country where I went last year. そこが私が去年行った国です。
= That is the country to which I went last year.
This is the place where the accident happened. ここが事故が起きた現場です。
Is there a shop near here where I can buy postcards? この辺に葉書を買える店がありますか。

when (= in which, at which, on which) 先行詞が日時の場合

1950 is the year when I was born. 1950年は私の生れた年です。
= 1950 is the year in which I was born.
It was a time when motorcars were rare. その頃は自動車の珍しい時代だった。
Sunday is the only day when I can relax. 日曜日は私がリラックスできる唯一の日です。
The time will come when you will regret it. これは後で後悔することになりますよ。

why (= for which) 先行詞が理由(reason)の場合

This is the reason why I am leaving. 私が辞めるのはそういうわけです。
= This is the reason for which I am leaving.
The reason why he came so early is unknown. 彼がそんなに早く来た理由は不明です。
Let me tell you the reason why I disagree. 私が反対する理由を言わせてください。
Tell me the reason why you are quitting your job. 仕事をやめる理由を話してください。

how (= the way in which)  先行詞が方法の場合(ただし how は先行詞を含む)
the way + how … となることは現在ではまれで、how か the way のどちらか 1 つでよい。

That is how they do business. それが彼らのビジネスのやり方だ。
= That is the way they do business.
= That is the way in which they do business.
Be careful how you act. 立ち居振る舞いに気をつけなさい。
Just tell me how the story ends. ストリーはどのように終わるのか教えてくれ。
We asked how we could help. 私たちはどのような形でお手伝いできるのか尋ねた。
Do you have any idea how he broke his leg? 彼がどのように骨折したのか知っていますか。
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# by LanguageSquare | 2018-04-06 11:19 | 関係詞 | Comments(0)
関係代名詞
関係代名詞には who,which,that がある

松野町夫 (翻訳家)

関係代名詞は一般に、名詞(=先行詞)の直後に置かれ、その名詞を修飾する節(=関係節)を作る。たとえば、the boy who broke the window 「窓ガラスを割った少年」の場合、boy が先行詞で、who が関係代名詞、who broke the window が関係節である。先行詞(boy)と関係代名詞(who)は等しい。 boy = who. つまり関係代名詞は、先行詞のいわば分身である。

関係代名詞を含む構文は「先行詞」+「関係節」という語順となる。関係節は一般に、関係代名詞や関係副詞で始まる。英米風に定義すると、関係代名詞は名詞句と関係節を連結する(Relative pronouns link noun phrases to a relative clause.)ものである。

関係代名詞には who,which,that がある。先行詞が人の場合は who, 物の場合は which, 人や物の場合は that というように使い分ける必要がある。本来、who は「だれ」、which は「どちら」を意味する疑問代名詞で、that は「あれ」を意味する指示代名詞だが、これらの単語がいったん関係代名詞として使われると、もとの意味は消失し、まったく異なる用法や機能を持つようになる。

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以下の例文の下線部はすべて関係節(relative clause)を表す。

who: (who – whose – whom) 先行詞が人の場合
He is the boy who broke the window. 彼が窓ガラスを割った少年です。
He held a small child whose face I couldn't see.
彼は小さな子供を抱えていたが、その子の顔は私には見えなかった。
I don't like to speak ill of someone whom [or who] you are close to.
あなたが親しくしている人を悪く言いたくありません。

which: (which – whose / of which – which) 先行詞が物の場合
Books which sell well are not necessarily good. よく売れる本がいい本とは限らない。
He looked for a car whose engine was running. 彼はエンジンがかかったままの車を探した。
Novels whose authors are famous sell readily. 有名な作家の小説はよく売れる。
Novels of which the authors are famous sell readily. 有名な作家の小説はよく売れる。
The keys which I lost last month have been found. 先月なくした鍵が見つかった。

that: (that – that) 先行詞が人や物の場合、先行詞が人と物の両者を表わす場合
That is all that matters. それが一番大事なことだ。
They cut the tree that blocked the view. 彼らは眺めをさえぎっていた木を切った。
He is the man that lives next door to us. 彼は私たちの隣に住んでいる人です。
He has written about the people and things that interest him.
彼は自分がおもしろいと思う人々と事柄とについて書いた。

その他の関係代名詞

関係代名詞には、what, whatever, whoever, whichever などもある。これらはwhich, who, that とは異なり, 意味上先行詞を含む関係代名詞である。

what (= the thing that, things that)

What I say is true. 私の言うことは本当です。
Do what you're told. 言われた通りにしなさい。
This is what he says. これが彼の言っていることです。
What he did was wrong. 彼のしたことは間違っていた。
What John bought yesterday is a car. ジョンが昨日買ったのは車です。
She pointed to what looked like a bird. 彼女は鳥のように見えるものを指さした。
He always does what he believes is right. 彼はいつも正しいと信じることをする。

whatever (= anything that)

Do whatever you like. 何でも好きな事をしなさい
= Do anything you like.
You may do whatever you like. 何でも好きなことをしてよい。
Take whatever you need. 必要なもの何でも持って行きなさい。
Whatever happens, I will do it. 何が起こってもそれをやるつもりです。
Whatever you say is all right with me. どんなことをおっしゃっても私は構いません。
Tom will do whatever she asks him. 彼女に頼まれたらトムは何でもやるでしょう。
Say whatever you want, my opinion won't change.
何でも好きなように言いなさい、でも、ぼくの考えは変わらないよ。

whoever (= anyone who, any people who)

Whoever comes is welcome. 来る人は誰でも歓迎します。
We'll welcome whoever comes. 来る人は誰でも歓迎します。
Ask whoever is there. 誰でもいいからそこにいる人に尋ねなさい。
I won't do it, whoever asks. 誰から頼まれてもそんなことはしません。
A prize will be given to whoever solves the riddle.
このなぞを解いた人は誰でもほうびがもらえます。

whichever (= any one that)

Take whichever you like. どれでも好きなのを取りなさい。
Buy whichever you like. どちらでも好きなのを買いなさい。
Whichever they choose, we must accept their decision.
彼らがどちらを選んでも、私たちは彼らの決定を受け入れなければなりません。
Come on Monday or Tuesday, whichever is most convenient.
月曜日か火曜日、どちらか一番都合のいい日に来てください。
You can leave at 4:00 or when you've finished the job, whichever comes first.
4時またはあなたがこの仕事を終えたとき、どちらか早い時間に、退社してかまいません。
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# by LanguageSquare | 2018-03-21 11:38 | 関係詞 | Comments(0)
関係詞 
関係詞は文章の形で物事を修飾するときに使う

松野町夫 (翻訳家)

関係代名詞や関係副詞、関係形容詞を総称して関係詞(relative)と言う。日本語に関係詞はないので、関係詞は私たちにとって理解するのがむずかしい。しかし、関係詞は文章の形で物事を修飾するときに使うものだと考えるとわかりやすい。たとえば、

私はきのうコンビニで弁当を買った。
I bought a box lunch at a convenience store yesterday.

この基本文から、「私」「きのう」「コンビニ」「弁当」を修飾する節を取り出すと、以下のようになる。

きのうコンビニで弁当を買った私
「きのうコンビニで弁当を買った」が修飾語で、被修飾語の「私」にかかる(以下同様)。
I, who bought a box lunch at a convenience store yesterday

私がコンビニで弁当を買ったきのう
yesterday, when I bought a box lunch at a convenience store

私がきのう弁当を買ったコンビニ
the convenience store where I bought a box lunch yesterday

私がきのうコンビニで買った弁当
the box lunch which I bought at a convenience store yesterday
= the box lunch that I bought at a convenience store yesterday

このような文章の形をした修飾語(=形容詞節)の翻訳には、関係代名詞(who, which, that)や関係副詞(when, where)が必要となる。実際、関係詞を使わないかぎり翻訳できない。

先行詞、関係詞、関係節
日本語では修飾語は常に被修飾語の前に来るが、英語では名詞(または代名詞)が先行し、その直後に関係詞がくる。そこで、先行する名詞を先行詞(Antecedent)と呼び、また、関係詞で始まる節を関係詞節または単に関係節(relative clause)と呼ぶ。

節とは何か?
節 (clause) とは、2語以上の語が集まってひとつの品詞の働きをするもので、S + V の形式を持つものをいう。関係節は先行詞(名詞)を修飾する。つまり形容詞の働きをするので形容詞節となる。

A nurse is a person who is trained to take care of sick or injured people.
看護師とは病人や怪我人を世話する教育を受けた人のことである。
この例文では、person が先行詞(=被修飾語)で、who が関係代名詞、who is trained to take care of sick or injured people が関係節(=形容詞節)となる。

A nurse is someone whose job is to take care of sick or injured people.
看護師とは仕事として病人や怪我人を世話する人のことである。
この場合、someone が先行詞(=被修飾語)で、whose が関係代名詞、whose job is to take care of sick or injured people が関係節(=形容詞節)となる。
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# by LanguageSquare | 2018-02-21 17:05 | 関係詞 | Comments(0)
アスペクトとは何か
英語には、完了と進行の2つのアスペクトがある

松野町夫 (翻訳家)

英語のアスペクト aspect [ǽspekt] は、ラテン語 aspectus 「見ること」「見えるもの」に由来し、日本語の「外観(姿)」「見方」「面」「側面」に相当する。たとえば、

a mountain with a beautiful aspect 姿の美しい山
There are many aspects to the problem. その問題にはいろいろな見方がある。
Mental stress affects all aspects of life. 精神的ストレスは生活の全ての面に影響を与える。
I want to approach the problem from a different aspect. 別の側面からこの問題に取り組みたい。

ここでは、英文法の用語、時制(テンス)と相(アスペクト)のうち、アスペクトを仔細に検討する。

英語の動詞は語形変化する。たとえば、go - went - gone - going のように、現在・過去・過去分詞・現在分詞と 4通りに変化する。最初の 2つ、現在・過去(go - went)は時制を表し、残りの 2つ、過去分詞(gone)と現在分詞(going)はアスペクトを表す。

時制は動作の起きた時(現在・過去)を表す。これに対して、アスペクトは動作が完了しているのか、進行中なのかなど、動作の様態(様子や状態)を表す。過去分詞(gone)は、have を伴って動作の完了を表し、現在分詞(going)は、be を伴って動作の進行を表す。英語には、完了と進行の2つのアスペクトがある(English has two aspects: perfect and progressive)。

時制(現在・過去)とアスペクト(完了・進行)を組み合わせると、以下のように 8 種類の構文ができる。

現在単純形 → He goes to school every day. 彼は毎日学校へ行く。
過去単純形 → He went to school yesterday. 彼は昨日学校へ行った。
現在完了形 → He has gone to school. 彼は学校へ行った(今、ここにはいない)。
過去完了形 → He had gone to school. 彼は学校へ行った(その時、そこにはいなかった)。
現在進行形 → He is going to school. 彼は(今)学校へ行く途中だ。
過去進行形 → He was going to school.  彼は(その時)学校へ行く途中だった。
現在完了進行形 → I have been running. (さっきまで)走っていた(今、息切れしている)。
過去完了進行形 → I had been running. (その時まで)走っていた(その時、息切れしていた)。

単純形は時制があるのみでアスペクトはない。完了形は完了している動作を表し、進行形は進行中の動作(=まだ完了していない動作)を表す。完了進行形は完了している動作または継続中の動作のいずれかを表す。

完了形には現在完了と過去完了の 2種類がある。

現在完了はhave/has+過去分詞の形で、過去の動作と今の状況を表す。現在完了は過去形と現在形の2つの文に置き換えることができる。

He has gone out. 彼は外出している。(いま彼はここにいない)
= He went out and he is not here now.

I have lost my watch. 時計をなくした。(まだ見つかっていない)
= I lost my watch and I can't find it yet.

過去完了は had + 過去分詞の形で、過去の動作と過去(その時)の状況を表す。過去完了は 2つの過去形の文に置き換えることができる。

He had gone out. 彼は外出していた。(その時彼はそこにいなかった)
= He went out and he was not there then.

I had lost my watch. 時計をなくしていた。(その時まだ見つかっていなかった)
= I lost my watch and I couldn’t find it then.

進行形には現在進行形と過去進行形の 2種類がある。進行形は動作動詞(go, run)が対象となる。状態動詞(know, want)は進行形にしない。 I know her. (I am knowing her. はダメ)

現在進行形は be 動詞+現在分詞(動詞の -ing)の形で、現在進行中の動作を表す。

He is going to school. 彼は(今)学校へ行く途中だ。
= He is in the middle of going to school.

過去進行形は be 動詞+現在分詞(動詞の -ing)の形で、過去に進行中だった動作を表す。

He was going to school. 彼は(その時)学校へ行く途中だった。
= He was in the middle of going to school.

完了進行形には現在完了進行形と過去完了進行形の 2種類がある。完了進行形は動作動詞(go, rain)が対象となる。状態動詞(know, want)は完了進行形にしない。

現在完了進行形はhave/has been + 現在分詞の形で、完了している動作または継続中の動作のいずれかを表す。どちらを表しているかは文脈による。たとえば、

Is it raining?  いま雨は降っていますか?
No, but the ground is wet. It has been raining.
いいえ、でも地面がぬれています。雨はさっきまで降っていました。(完了している動作)

Is it raining? いま雨は降っていますか?
Yes. It has been raining since yesterday. はい、きのうからずっと降っています。(継続中)

過去完了進行形はhad been + 現在分詞の形で、完了していた動作または継続中だった動作のいずれかを表す。どちらを表しているかは文脈による。たとえば、

Was it raining then? その時雨は降っていましたか?
No, but the ground was wet. It had been raining.
いいえ、でも地面がぬれていました。雨はその少し前まで降っていました。(完了していた動作)

Was it raining then? その時雨は降っていましたか?
Yes. It had been raining since the day before. はい、前日からずっと降っていました。(継続中)

時制(テンス)と相(アスペクト):
安藤貞雄著『現代英文法講義』や “Cambridge Grammar of English” Carter & McCarthy, 2005 では、英語には、2つの時制(現在・過去)と2つのアスペクト(完了・進行)があるとする。ただし、学校文法では will + 動詞の原形を未来時制と認め、時制には現在・過去・未来があるとする。同様に、綿貫陽著 『ロイヤル英文法』でも、時制には、現在・過去・未来の3つの基本時制のほかに、それぞれ完了形と進行形と完了進行形があるとし、単純未来のみを未来時制として認めている。
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# by LanguageSquare | 2018-01-30 09:45 | 時制 | Comments(0)
軽動詞とは何か
軽動詞の魅力は、そのわかりやすさと表現力の豊かさにある

松野町夫 (翻訳家)

軽動詞とは意味の軽い動詞を意味し、たとえば、have a walk(散歩する)、take a drive(ドライブする)、give a smile(微笑する)、make a visit(訪問する)における have, take, give, make を指す。軽動詞(light verb)という概念は、デンマークの英語学者・言語学者、オットー・イェスペルセン Otto Jespersen(1860‐1943)による。

軽動詞は目的語に通例、a+動作名詞をとる。動作名詞は動詞と同形または類似の名詞となる。軽動詞の構文では、軽動詞は単に「する」という軽い意味を示すのみで、目的語のa+動作名詞(a walk, a drive, a smile, a visit)がより重要な情報を表わす。

軽動詞の構文は、SVO の文型をとる。軽動詞構文(light verb construction)は、動作名詞の動詞を使って、SV の文型に書き換えることができる。たとえば、

I have a walk. 私は散歩する。 → SVO 
= I walk. 私は歩く; 歩いていく; 散歩する。 → SV

同様に、take a drive (drive), give a smile (smile), make a visit (visit) というように、動詞一語で書き換えることができる。書き換えても意味は基本的に変わらないが、同じ意味の動詞より、a+動作名詞のほうが1 回だけの行為であることが強調されるので、微妙なニュアンスの違いはある。

軽動詞(light verb)の反対語は、実動詞(full verb)である。軽動詞がその動作の意味を動作名詞にゆだねるのに対して、実動詞はその動作の意味を自ら示す。動詞は一般にほとんど実動詞だが、have, take, give, make は、軽動詞になる場合と実動詞になる場合がある。たとえば、

I have a walk. 私は散歩する。 → 軽動詞
I have a pen.  私はペンを持っている。 → 実動詞

I took a drive. 私はドライブした。 → 軽動詞
I took a pen.  私はペンを取った。 → 実動詞

軽動詞と実動詞の区別は、目的語が決め手となる。目的語が動作名詞であれば軽動詞、そうでなければ実動詞。 a walk や a driveは動作名詞であるが、a pen は物品であり、動作を表す名詞ではない。

軽動詞の魅力は、そのわかりやすさと表現力の豊かさにある。動詞を名詞化したことによって、その動作を単体として取り出し、形容詞をつけることが可能となり、これにより英語の表現力は洗練され、格段に進化した。

「入浴する」 take a bath (= bathe) のような単純な表現では軽動詞のありがたみを実感できないが、「熱い風呂に長く入る」というような少し複雑な表現になると、実動詞の bathe を使うより、軽動詞の take a bath のほうがはるかに簡潔に表現できる。たとえば、

朝風呂に入るのが好きだ。
I like to take a bath in the morning. → 軽動詞
I like to bathe in the morning. → 実動詞

熱い風呂に長く入るのが好きだ。
I like to take a long hot bath. → 軽動詞
I like to bathe long in a hot bath. → 実動詞

take / have:

「入浴する」は、米語では take a bath (= bathe) だが、英国では have a bath (= bath) と言う場合が多い。同様に、「シャワーを浴びる」「散歩する」などについても米語では take a shower (= shower), take a walk (= walk) だが、英国では have a shower, have a walk となる傾向がある。

走った後で彼女はシャワーを浴びた。
She took / had a shower after her run. → 軽動詞
She showered after her run. → 実動詞

夕食のあと浜辺を散歩した。
We took / had a walk along the beach after dinner. → 軽動詞
We walked along the beach after dinner. → 実動詞

Did you have a good sleep? よく眠れましたか?
Let's take a walk on the beach after dinner. 夕食のあと浜辺を散歩しよう。
We need to have a good long talk. 私たちは、じっくりとよく話し合う必要がある。
I was taking a bath when the phone rang. 入浴していたら電話がなった。

give:

彼は冷笑した(あざ笑った)。
He gave a cynical smile. → 軽動詞
He smiled cynically. → 実動詞

Give me a call tomorrow. 明日、電話してください。
Come on, give Grandpa a hug. おいで、おじいちゃんをハグして。
He gave a loud cry and fell to the floor. 彼は大きく叫んで床に倒れた。
We should give the dog a bath this weekend. 週末には犬を洗ってあげたほうがいい。
She looked up from her work and gave a little yawn. 彼女は仕事から目を上げ、小さなあくびをした。

make:

彼らは早めに出発した。
They made an early start. → 軽動詞
They started early. → 実動詞

上司に電話をしなければなりません。
I have to make a (telephone) call to my boss. → 軽動詞
I have to call / telephone my boss. → 実動詞

I made a mistake in the last math problem. 数学の最後の問題を間違えた。
We made a long detour to avoid the busy traffic. 私たちは交通の混雑を避けて遠回りをした。
Can I use your cell phone to make a call? 電話したいのだけど、ケータイ貸してくれない?
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# by LanguageSquare | 2017-12-21 11:01 | 動詞 | Comments(0)
さいころ物語
さいころの目は制御できるか

松野町夫 (翻訳家)

さいころは主に室内のゲームやギャンブルに用いる小道具。形状は一般に立方体(正六面体)で、各面に 1~6 個の小さな点が記され、1 の裏が 6、2 の裏が 5 というように、両面の和はいずれも 7 になる。日本には奈良時代に中国から伝来した。賽(さい)ともいう。

私たちは日常、0~9 の10個の数字を用いる。しかし、普通のさいころは数の範囲が 1~6 に限定されているので十進法には不向きである。とくに乱数を得たい場合、20面体ダイスを使用するのが一般的だ。私は20面体ダイスを 2個(赤色と黄色)持っている。20面体ダイスは、各面は正三角形で、0~9 の数字が記され、全体として同じ数字がふたつ存在する。ただし乱数は現代では、コンピュータで発生させる場合が多い。

さいころには 1面体から 144面体までいろいろな形状がある。
1面体ダイスは、転がしても 1 しか出ない。数学ではこれを「メビウスの帯」(Möbius strip)と呼ぶ。帯を一回(180°)ひねって、両端を貼り合わせて作ったもので、表と裏の区別がない。2面体ダイスは二者択一には最適だ。100面体ダイスや144面体ダイスは、ゴルフボールに近い。
1面体から 144面体までのさいころの画像については、以下のサイトを参照してください。
http://oreore.red/polyhedron-dice-1-100

さいころは神事、占い、遊び、賭博、念力の検証、奇術、曲芸、乱数の発生などの用途に用いる。さいころは小さいので持ち運びに便利で、また、どこか知的な雰囲気があり、人を夢中にさせる不思議な魅力がある。

双六(すごろく)遊びに、さいころは欠かせない。子供の頃、兄弟姉妹たちと一緒によく遊んだ。双六には「振り出し」から「上がり」まで数十個のステップがあり、基本的に、さいころを振って出た目の数だけ前に進めるので、6 を念じながら振るのだが、なかなか思うようにいかない。

『平家物語』の巻一には、白河法皇が「賀茂河の水、双六の賽、山法師、是ぞわが心にかなわぬもの」と嘆いたとある。賀茂河の水を「天災」、双六の賽を「確率」、山法師(比叡山延暦寺の僧兵)を「政治・宗教」と解釈すれば、この「天下三不如意」は、現代でも難題であることに変わりはない。

さいころは念力の研究に使用される。アメリカの心理学者J.B.ライン教授 Joseph Banks Rhine (1895‐1980) は、超常現象のうち、ESP と念力を専門に研究し、数量的測定法を考案して、超心理学の学問的基礎を確立した。ESP(extrasensory perception; 超感覚的知覚)とは、透視、テレパシー、予知の三つをまとめていう。ライン教授はESP 研究にはESPカード(星、十字、波、円、正方形)を用い、念力の研究にはさいころを用いた。

さいころは六面体なので、さいころを転がして 1 の出る確率は1/6 で、6 の出る確率も1/6 である。しかし、たとえば、6 を念じながらさいころを振り、毎回 6 が出れば念力の存在を完璧に証明できるし、そうでなくても、その確率を著しく高めることができたとすれば、念力の存在をそれなりに証明できることになる。ただし、特定の目が出るように鉛などの重りを入れた「いかさま賽」(loaded dice)を使用してはならない。

さいころの目を思いどおりに出すには気力が充実していなければならない。そこで私は若い頃、毎週日曜の早朝に早稲田のヨガ教室に通い気力の鍛錬に励み、午後は念力の修練に努めた。これを半年ほど続けたが、確率を高めるのは至難の業で、残念ながら自分には念力の素質がないことが判明した。

しかし、すべてが無駄骨に終わったわけではない。ヨガの帰途、新宿の将棋道場に立ち寄り将棋を指したが、勝率が以前と比べて格段に向上した。以前ほぼ互角だった相手に 8 割以上の勝率で渡り合うことができるようになっていた。双六のような「運がものをいうゲーム」(a game of chance)の勝率を高めるのは至難の業だが、囲碁・将棋のような実力がものをいうゲームの勝率は気力で高めることができるということを実感した。ありがたいことに、気力はヨガや座禅などを通して誰でも鍛錬することができる。

透視マジック「箱の中のさいころ」や予知マジック「見えないサイコロ」は、私のもっとも得意とする奇術である。また、テーブルに並べた 5 個のさいころを、ダイスカップを左右に振りながら1個ずつカップに取り込み、最後に 5 個のさいころを縦に積み重ねるという曲芸、ダイススタッキング(Dice Stacking)に20代の頃、熱中した。ダイススタッキングのビギナー向け動画について、詳しくは以下のサイトを参照してください。
https://www.youtube.com/watch?v=GAbZ5l46h4I

さいころは英語でdice [dáis] ダイス。可算名詞。アメリカ英語ではさいころは単数形 die で、複数形 dice である。しかし、イギリス英語では dice は単複同形(a dice, two dice)である。

Each player throws one die. (アメリカ英語) 
競技者はそれぞれ、1 個のさいころを振る。
A dice is a small cube which has between one and six spots on its sides.(イギリス英語)
さいころは小さな立方体で、各面に1~6 個の点が記されている。

賽は投げられた。 The die is cast.
これは、Julius Caesar(ジュリアス・シーザー)が紀元前49年1月10日、元老院に背いて軍を率いて南下し、北イタリアのルビコン川を通過する際に言ったとされる言葉で、意味は以下の通り:
Today we cross the Rubicon. There is no going back.
今日、私たちはルビコン川を渡る。もう後戻りはできない。

神はさいころを振らない。 He does not throw dice.
これは、量子力学の確率的要素を嫌ったアインシュタインの言葉である。現代物理学では量子的できごとのレベルは本質的に不確定性がある(不確定性原理)と主張するが、アインシュタインは、宇宙はさいころ(確率や偶然)ではなく、確定的な法則(必然)に支配されているはずだと確信していたようだ。アインシュタインは無神論者である。彼は自然法則こそが神であり、人格のある神はいないと考え、神(God)を "the Old One" と呼んでいた。以下の文言は、Wikiquote “Albert Einstein” から引用した。

Quantum mechanics is certainly imposing. But an inner voice tells me that it is not yet the real thing. The theory says a lot, but does not really bring us any closer to the secret of the "old one." I, at any rate, am convinced that He does not throw dice.
【筆者訳】 量子力学はたしかに印象的だ。しかし、まだ本物ではないと内なる声が私に告げる。量子論は多くのことを述べるが、本当のところ、自然の神秘に私たちをさらに近づけているというわけではない。いずれにせよ、神はさいころを振らないと私は確信している。

さいころを振ってどの目が出るかは予測不能である。この意味で、さいころの目は確率や偶然の産物となる。しかし発想を変えて、さいころの目をニュートン力学(古典力学)における物体の運動と見れば、さいころの目は初期の条件で決まることになる。

人がさいころを握ってテーブルに転がす場合、さいころの状態(立ち位置)、転がす力の強度・速度、落下高度・角度など多数の条件が関係するので、どの目が出るかは現実には予測不能である。しかし条件をできるだけ単純化すれば、さいころの目は制御可能となるはずだ。そこで、一辺13 mm のさいころを、厚み23 mm のタバコの箱にのせ、1 を上に、2 を前にした状態で、静かに落下させたところ、毎回、5 が出ることが判明した。これは、力の強度・速度、落下高度・角度などを設定できる精密な人型ロボットを使えば、さいころの目は制御できることを示している。
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