フタゴムシ
原田克子
鯉の鰓に付着したフタゴムシは
もう一匹が流れて来るのを待つ
気長に待つ
呼び寄せる術がないのだ
フタゴムシは雌雄胴体なので
一匹でも卵を産めるのだが
大人になれない
二匹が出会えたら
自分の雄性生殖器を相手の雌性生殖器に
挿入して
左右対称につながり合う
いずれ二匹は腸まで癒合させ
対等の対峙は
夥しい卵を産出して
鰓に棲息する
鯉にしてみれば
搾取される養分によって衰弱し
不快さにのたうちまわるのだが
宿主が死ねば自分も死ぬことになる
フタゴムシは
鯉を殺したりはしない
が 不快と衰弱以外は与えない
共生ではなく
寄生なのだから
しかしもしかしたら
寄生虫とよばれるものたちの発生物質が
アレルギーを抑制しているのではないか
と 自分の腸にサナダムシを二匹飼っている
科学者はいった
フタゴムシの効能が認知されるまえに
環境ホルモン物質により
密度を濃くした水中で
鯉はメス化をまぬがれず
フタゴムシも消滅する朝がくる
※フタゴムシの生態は「目黒寄生虫館ガイドブック」より
詩集『シュールダンスをあなたと』より
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