人気ブログランキング | 話題のタグを見る

漢字の誕生と甲骨文字

漢字の誕生と甲骨文字
漢字物語 (1)

松野町夫 (翻訳家)

日本語の現代文はふつう、漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字などを使用して書く。たとえば、「鹿児島MBCテレビの『私たちの宝物』は、視聴者の赤ちゃんを紹介する番組です」、というように。使用する文字はたいていの場合、「ひらがな」が一番多いが、この例では漢字が14字と最も多く、つぎに「ひらがな」の13字と続く。日本語の現代文には漢字やひらがなが多用される。

漢字は文字通り中国の文字。中国王朝の歴史は、夏・殷・周・秦・漢・三国(魏、呉、蜀)・晋・南北朝・隋・唐・五代十国(混乱期)・宋・元・明・清と続くが、漢字が誕生したのはどの時代だったのだろうか?

ウィキペディアの「甲骨文字」によると、現在知られている最古の漢字は殷の時代(紀元前17世紀~紀元前11世紀)に使われた甲骨文字(こうこつもじ)とのこと。

殷の時代には、占いに亀の腹甲(腹側の甲羅)や牛や鹿の骨を使用した。甲羅や骨などの裏側に小さな穴を穿ち、熱した金属棒(青銅製)をその穴に差し込み、表側にできた卜形のひび割れの形を見て吉凶を占った。事前に甲骨に占うことを刻んでおき、その後、割れ目の形で占い、判断を甲骨に刻みつけたが、その際に使われた文字が甲骨文字(=甲骨文)である。

甲骨文字は、物の形をかたどって作られた絵文字(=象形文字)である。絵文字ではあるが、線条的で抽象性もすでに高いので判読するのがむずかしい。ためしに、つぎの4つの甲骨文字を読んでみてください。

漢字の誕生と甲骨文字_b0129120_13521873.jpg

甲骨文字

全部、読めましたか?ね、意外とむずかしいでしょう。正解は左から、鳥・馬・鹿・魚。しかし解答をきくと、なるほどと納得できる。甲骨文字は、殷の首都、殷墟(河南省安陽市)の近郊から多数出土している。

なお、近年では殷墟から600km離れた周原でも甲骨文字が発見されており、殷朝の末期には周でも使われていたことが明らかになっている。実際に周原から出土した甲骨文字には、殷の東方に位置する部族に対して共闘を申し込んだ記述などが判明している。殷とは異なり、周では記録や契約等の記述に甲骨文字がすでに使われ始めていることが明らかになっている。

漢字は中国で発明され、秦の時代(紀元前221年~紀元前206年)に現在の文字の大部分が整ったという。ちなみに、この年代は日本の縄文時代(紀元前145世紀~紀元前10世紀)に相当する。もちろん縄文・弥生時代は日本には文字がなかった。ひらがなやカタカナが文字体系として完成するのは、ずっと後の平安時代(794~1192)のことである。漢字は、エジプトの象形文字、メソポタミアの楔形(くさびがた)文字などと同じ古代文字である。古代文字は現在ほぼ全滅しているが、唯一の例外が漢字である。漢字は現在、本家中国ばかりでなく、台湾・日本・韓国でも使われている。また、シンガポール、マレーシアには、中国から移住した人たちが多く、今でも漢字を使用している地域がある。


by LanguageSquare | 2014-12-11 13:53 | 漢字 | Comments(0)