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未来時制 (future tense) その1

未来時制 (future tense) その1
未来にwill の使用できる場合は意外と少ない

松野町夫 (翻訳家)

日本ではよく「来年のことを言うと鬼が笑う」という。”Talk about next year and the devil will laugh.” これは、実現性のないことや予想のつかないことを言った時に からかうことばで、「将来のことは今から決めることはできない」の意。似たような慣用句、たとえば、「ケセラセラ」はスペイン語で「なるようになる」の意。英語では「Whatever will be, will be」という。

Whatever Will Be, Will Be
(Que Sera, Sera)
Song by Doris Day

When I was just a little girl 私がまだ小さな女の子だったころ
I asked my mother what will I be 私の未来をママにきいてみたの
Will I be pretty, will I be rich 私、かわいくなれる?お金持ちになれる?
Here's what she said to me そしたらママはこんなふうにいったの

Que sera, sera ケ・セラ・セラ
Whatever will be, will be なるようになるわ
The future's not ours to see 将来のことなんて誰にもわからないのよ
Que sera, sera ケ・セラ・セラ
Whatever will be, will be なるようになるわ

たしかに将来のことは誰にもわからない。しかし未来は「たぶん~だろう」と予想・予測することができる。「~だろう」と未来を予想・予測する場合、英語では will を使用する。

What will I be? 私はどんなふうになるのかしら?
Will I be pretty? かわいくなれるかしら?
Will I be rich? お金持ちになれるかしら?

では未来のことを話すときは、必ず will を使用するのかというと、実はそうではない。たとえば、

Tomorrow is Sunday. あすは日曜日です。
It is our wedding anniversary tomorrow. あすは私たちの結婚記念日です。
If the weather is nice tomorrow, I want to play tennis. あす天気がよければテニスをしたい。

上の例文はいずれもあす(未来)の話なのに is が使用されている。 is は現在形。このように未来のことでも現在形を使用する場合が多い。しかし will が絶対に必要な場合がある。たとえば、

It's Sam's birthday tomorrow. He'll be seven. (He’ll = He will)
あすはサムの誕生日です。彼は(あす)7歳になります。

この場合、”He will be seven.” の代わりに “He is seven.” というと、聞き手は「サムは現在7歳で、あす8歳になる」と勘違いする。このケースでは will が絶対に必要だ。will を使用したことで、この文が未来時制であることがはっきりする。


will には以下のようにさまざまな用法がある。
1. 単純未来を表わす → He will be seven tomorrow. You’ll be in time if you hurry.
2. 意志未来を表わす → I’ll check this letter for you, if you want.
3. 主語の強い意志を表わす → The door won’t open. She won’t listen.
4. 習性・必然性を表わす → Boys will be boys. Oil will float on water.
5. 能力を表わす → This car will seat five people comfortably.

このうち、未来時制となるのが単純未来だ。未来時制=will の単純未来。単純未来は「未来は~だろう」と未来のことを予測するものなので時制と深くかかわる。これに対して意志未来は、「これから~しよう」という意志を示すものであり、現代英文法では時制として扱わず、法助動詞(can, may, must, will, shall など)として取り扱う場合が多い。will の意志未来は、昔は未来時制の一種と考えられていたが、現代では現在時制と解釈するのがふつうである。同様に、上項 3. 4. 5. の「強い意志」や「習性・必然性」、「能力」などの用法も未来時制ではなく現在時制と考えた方がわかりやすい。その証拠にこれらの表現はすべて、will を使用しなくても現在形で表現できる。たとえば、

The door won’t open. このドアはどうやってもあかない。
= The door refuses to open.
Boys will be boys. 男の子はやはり男の子だ(いたずらはつきものだ)。
= Boys are boys everywhere.
This car will seat five people comfortably. この車には 5人ゆったり乗れる。
= This car seats five people comfortably.

つまり、will が使用されていたからといって、未来時制だとはかぎらない。確実にいえることは過去時制ではないということだけだ。未来時制は will の単純未来のみ。

英語では未来のできごと (future events) をだいたい以下のように区別し、それぞれの状況にふさわしい表現方法を用意している。

■ 未来のできごと
1. 「~だろう」と未来を予測する場合(単純未来) →will, be going toを使用する
2. 「~しよう」とその場で決める場合(意志未来) → will を使用する
3. 「~するつもりです」とすでに決めている場合 → plan, be going toを使用する
4. 「~します」とすでに決め、手配している場合 → 現在進行形を使用する
5. 交通機関の発着時刻や重要なイベントの日程などを述べる場合 → 現在形を使用する

たとえば、結婚を例にとると、
They will get married someday. ふたりはいつか結婚するでしょう。(単純未来)
Will you marry me, Kate? ケート、結婚してくれませんか。(相手の意志を確認している。意志未来)
Yes, I will. はい、結婚します。(その場で結婚することを決めている。これも意志未来)
We plan to get married next year. 私たちは来年結婚する予定です。(plan)
We are going to get married in June. 私たちは 6月に結婚するつもりです。(be going to)
We are getting married next month. 私たちは来月結婚します。(現在進行形)
The wedding reception begins at 3 p.m. on Sunday next week.
結婚披露宴は来週日曜日午後3時からです。(現在形)

「彼は今晩何時に成田(空港)に到着しますか」を表現するとき、What time will he arrive at Narita tonight? とは英米人はあまり言わない。英米人は手配済みのできごとにwill を使用しない。will の代わりに現在進行形(he is arriving)を使って What time is he arriving at Narita tonight? というのがふつう。未来といえば、私たちはつい will を使いたくなるが、will の使用できる場合は意外と少ない。
by LanguageSquare | 2012-02-12 13:58 | 時制 | Comments(0)